こんにちは!フスボン川谷です。
新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を奮っていますね。そんな中で、糖尿病の持病がある方が、COVID-19にかかりやすいのではないかと言う問合せがあったので、免疫とは何かというところから自身で学んでみました。
免疫とは
新型コロナウイルスのイメージ画像
免疫力がある・免疫力がないなどとよく使われますが、私たちの免疫の機構は二段構えになっていて、自然免疫機構と獲得免疫機構があります。
前者が生まれつき持っている免疫機構、後者は生活していく中で獲得する免疫機構です。それぞれについてみていきましょう。
自然免疫機構とは
物理的・化学的バリアー
病原体=抗原とも言います。今回の病原体はウイルスです。
ウイルスが私たちの体内に入る前に、皮膚や粘膜で侵入を防いでくれます。
それを物理的・化学的バリアーと言います。
細胞性バリアー
次にそのバリアをウイルスが通り抜けると、白血球を代表とした食細胞と言われる細胞(マクロファージや樹状細胞)が、ウイルスを食べてくれます。このような自然免疫機構は、とても素早く働くことができる(数分から1時間単位)ことを大きな特徴としますが、前に食べたウイルスを覚えておくことが出来ません。
また食細胞は、次に説明するリンパ球にウイルスが侵入していることを知らせます。
上記2つのバリアーは、生まれながら8割方完成しています。
獲得検疫機構とは
細胞性・液性バリアー
それに対して、獲得免疫機構では、リンパ球が抗体を作ります。その抗体が入ってきたウイルスに結合してウイルスを殺します。
また一部のリンパ球は、キラーT細胞という細胞を作って、ウイルスが住み込んでしまった細胞自体を殺してくれます。リンパ球は以上のように非常に重要な役割を持っています。
よくリンパ球の持つレセプターと言われる受容体を鍵穴に例えて表現します。リンパ球は数百万種類以上の鍵穴を持っていて、どのような抗原に対しても対応できます。
抗原が入ってきてその鍵穴にはまると、特定の抗体で抗原に対して攻撃をして、その鍵穴を持つリンパ球を増やします。
未知の抗原にリンパ球が対処するのは時間はかかります(数日程度)が、後に同じウイルスが入ってきても記憶(対抗したリンパ球を増やして残す)しておいてすぐに対処することが出来ます。
驚いたのは、どんな抗原に対してでもそれに対応した鍵穴をもったリンパ球が少数ながら存在することです。全くゼロの状態から抗体を作っていくと思いきや、どんな抗原に対してでも対応できるリンパ球があり、そのリンパ球が増えるのに時間がかかるということです。
獲得免疫機構は双子でも、育つ環境が全く同じとはならないので、異なった獲得免疫機構となります。
抗体にも三つの種類がある
リンパ球が抗原と結びつくイメージ画像
また、せっかく特定の抗原に対してリンパ球増えて抗体が増えたとしても、問題が生じる場合があります。それは、その抗体が抗原に対して対処できない、あるいは別の悪影響を与えてしまうケースです。
善玉抗体
ウイルスなどの病原が入ってきた時に、そのウイルスを殺してくれる抗体です。
悪玉抗体
ウイルスなどの病原が入ってきた時に、そのウイルスに作用せず、むしろ重症化など悪影響を与える抗体です。SARS(重症急性呼吸器症候群)や MERS(中東呼吸器症候群)では善玉抗体とともに悪玉抗体ができることが報告されています。
役なし抗体
これはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対しての抗体が有名です。
抗体はできるけれど、その抗体がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)を殺してくれません。
新型コロナウイルスの重症患者の抗体の場合
新型コロナウイルスの重症患者の体を調べてみると、抗体の量も上がっていることがわかっています。本来、抗体が上がっていれば重症化しないわけですが、その抗体が機能していないことがわかります。
つまり、コロナウイルスで重症化している人の体内には、疫なし抗体や悪玉抗体ができている可能性があります。
ですので、新型ウイルスに対して抗体を持っていると言っても、善玉抗体だけを検査できればいいですが、そのような検査ができる施設はごく一部で、悪玉抗体や疫なし抗体、あるいは普通の風邪と変わらないコロナウイルスの抗体を持っていても抗体検査で抗体ありとされてしまう恐れがあるので、その点は注意が必要です。
さて、ここまで免疫に関して簡単に学んできました。
ここから本題の糖尿病患者の場合、COVID-19に罹患した場合、重症化しやすいのかどうかという本題に入ります。
参考文献 著者 宮坂昌之 「免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ」
糖尿病の人は細胞性バリアーの機能が低下する
マクロファージが抗原を食べているイメージ画像
糖尿病患者の体内では、上記で述べた自然免疫の中の、細胞性バリアーの白血球(好酸球)の能力が低下します。
具体的には、抗原に移動するスピードが鈍る(遊走能の低下)ほか、好中球のために病原体を「食べやすく」加工してくれるオプソニン化作用が鈍り、肝心の貪食ができないなどが生じる。このため感染初期の防御がうまくいかず感染が広がってしまう。さらに血糖値が乱高下することで、ますます好中球の機能が低下し重症化へ突き進んでしまうのだ。
11万8982人の1型・2型糖尿病患者のデータを解析細胞性したオーストラリアの疫学調査では、追跡期間中(中央値6.7年)に、一般的な感染症や肺炎、敗血症、骨髄炎で6444人が死亡。一般人の感染症死リスクと比較すると、1型糖尿病で4.42倍、2型糖尿病で1.47倍という結果が報告されている。COVID-19の流行はしばらく続くだろう。1型、2型を問わず糖尿病の方は、普段以上に体調に気を配りつつ感染予防策と血糖コントロールを徹底しよう。
新型コロナは糖尿病があると重症化しやすい理由 ダイヤモンドオンライン 医学ライター・井手ゆきえさんに記事から引用しています。
まとめ
以上のように糖尿病の場合、新型コロナウイルスだから特別危険というわけではなく、そもそも細胞性バリアーの働きが弱いことで、抗原に対するアプローチが弱くリンパ球への通達も遅れてしまうことから、ワクチンのない未知のウイルスと対峙した際に常に危険であると言えます。
普段から糖尿病にならないように糖質の摂りすぎには気をつけましょう。では、また!