ケトン体・クエン酸回路とケトン体回路・ケトジェニックダイエットとは?

ケトン体・クエン酸回路とケトン体回路・ケトジェニックダイエットとは?

こんにちは!フスボンオーナーです。

糖質制限をしていると、ケトン体、ケトジェニックダイエットなどをよく耳にしますよね?
糖質制限を実践されたことがない方でも、最近では、サッカー選手の長友選手がケトン体回路を利用しているとお聞きになっている方も多いかもしれません。

実はこのケトン体回路という言葉は、クエン酸回路のようにきちんとした生物や医学用語とは少し違います。
クエン酸回路とケトン体回路を同じものと勘違いされている方も中にはいらっしゃるので、その点もご説明していきます。

詳しく理解するには、代謝についてある程度、理解する必要がありますが、まずはざっくり口語で説明しますね。

 

グルコース=ブドウ糖が血中で不足している際に、中性脂肪がケトン体として使われる

食べ物が入ってこない時間が続くと、体はまず筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲンと言われる糖が集まった糖の塊のようなものをエネルギー源として利用します。
肝臓に貯蔵されているグリコーゲンは約100gあり、筋肉に貯蔵されているグリコーゲンは約400gとされていますが、筋肉内のグリコーゲンは筋肉でしか使用できません。

それでも、空腹が続くと、タンパク質や筋肉をアミノ酸に分解して、さらに糖に変える「糖新生」という現象がおきます。
その理由は、後述しますが、赤血球がミトコンドリアを持たないため、糖がないと呼吸すらままならないからです。

同時に、脂肪をエネルギーとして使用する働きが強まります。その時、肝臓でできる物質をケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つの総称)と言います。

たまに雪山で遭難されたり、災害で数日間から長い時では1週間ほど、何も食べずに水だけで過ごしたなどとお聞きしたことがあると思います。
これは、体内の脂肪をエネルギーとして使用していたわけです。
もちろんこれは極端な例で、我々も生活の中で空腹が続いたり、寝ている間などはケトン体が出てケトン体をエネルギーとしています。

そもそも脂肪は飢えた時に、その脂肪をエネルギーとして使用するために蓄えているのですから、食べるものを選ばなければ飢えることがない、現代の我々の日本社会では、普通に食べていると脂肪をエネルギーとして使用することがないわけです。脂肪をエネルギーとして使用するには、糖の摂取を少なくする必要があります。

ですので、痩せるには糖質制限が必要というわけです。

ざっくりいうと以上のような感じですが、結構、飛躍していますよね。
理解するには、代謝に関する理解が必要です。下記で詳しく説明していきます。

 

生物は食べたものを身体の一部とする

車の絵 車はガソリンを燃焼させてエネルギーとするが、ガソリンが車と入れ替わる事はない。一方で生物は食べたものが身体と入れ替わる。

 

人は、食べたものを様々な消化酵素によって分解して、吸収します。その際に、様々な化学反応が起こります。その化学反応の際に、エネルギーを必要としたり、エネルギーが生み出されたりします。

これだけを読むと「食べるもの=エネルギー」と思いがちですが、車のようにガソリンを燃焼して、
爆発的なエネルギーを生み出す際に使うエネルギーを燃焼するという意味と、人間が脂肪を燃焼させてエネルギーにするという場合は、意味が異なります。

よくカロリーに関して、糖質とタンパク質ともに1gあたり4kcal、脂質1gあたり9kcalというのは知られていますが、この食品からは体内で最大限エネルギーをこれだけ合成できるという見込みの指標にすぎません。車のガソリンのように使用して残った分が蓄積するわけでもありません。

また、車がガソリンをエネルギーとして使うといっても、そのガソリンが車のハンドルやタイヤなどのパーツになる訳ではありません。
一方で、人間が口に入れるもののうち食物繊維など吸収できないもの以外は、CO2や水となって体外に排出されるだけでなく、体内の細胞に組み込まれます。吸収されない食物繊維などは、腸内細菌の餌になったり、便通を整えたりするために必要です。

よく食物が「血となり、肉となる」という言葉がありますが、食べることは、まさにその通りで、単にエネルギーを取り出しているのではなく、化学反応の際に、物質が入れ替わり、その際にエネルギーが生まれていることをまずは理解しましょう。

動物は、代謝の化学反応の際に生まれるエネルギーを、ATP(アデノシン3リン酸)と言われるエネルギーのカプセルのようなものを介して使用します。ですので、このATPを生み出すために人は様々なものを食べているともいえます。

食べ物は大きく分けて、炭水化物、タンパク質、脂質に分けられます。

炭水化物=糖質+食物繊維です。糖質、タンパク質、脂質が体内でどのように分解され、吸収されていくのかを理解すれば、脂質をエネルギーとしてどのように使用しているのかがわかります。

まずは、糖の代謝からご説明します。

 

糖の代謝

 ATPの化学式および構造

 

はじめに、細胞がATPを生み出すシステムには3種類あります。
①「解糖系」(嫌気呼吸)と言われるシステム
②「クエン酸回路」(TCA回路、クレブス回路)と言われる回路
③「電子伝達系」と言われるシステム

以上の3種類です。

ここでは、ケトン体回路という言葉は出てきません。ややこしいですが、一つづつ理解していきましょう。
理解するには、体の(細胞の)「どの場所」で「どんな反応」が起きているかということを理解する必要があります。
ですので、①から順に反応の起きる場所、どんな反応(得られる物質やATPの数など)について順にみていきましょう。

解糖系(=嫌気呼吸)について

まずは、ほとんどの生物が持っており、もっとも原始的なエネルギーを生み出すシステムである解糖系について説明します。
どうして原始的と言われているかというと、生物は昔は、ミトコンドリアを細胞の中に持っていなかったからです。
ミトコンドリアについては後述しますが、解糖系はミトコンドリアがなくても(酸素がなくとも)エネルギーを生み出せるシステムです。

 

反応の起きる場所

まず細胞の中の細胞質基質という場所でおきます。細胞は細胞膜という膜の中に、核やミトコンドリアなどが存在します。上の絵は、細胞を簡略した絵ですが、絵の中の①、つまり細胞の中の核でもミトコンドリアでもない、何も変哲もないスペースで反応がおきます。

 

 

解糖系で得られるATPと水素の数

細胞質基質において、グルコース(C6H12O6)がピルビン酸(C3H4O3)と言われる物質まで変化します。反応の経過についてはここでは省略しますが、この変化で2NADH、2つの水素イオン(H+)、2ATPが生じます。
ここで出てくるNADHは馴染みがなくわかりにくいですが、NADが電子を受け渡すのに都合のいい物質(電子伝達体と言います)ということをご理解頂ければ問題ないです。
水素は電子を渡したがる性質を持っています。電子を貰いがちな元素の代表は酸素で、電子を与えがちな元素が水素です。
(高校の化学で周期表の右側が電気陰性度が高いと記憶にある方も多いかもしれません。)

とりあえずここでは、水素HとNADが結びついたものと水素から電子が奪われた陽子(H+)が2個ずつできることだけわかって下さい。
つまり、1molのグルコースから2molのピルビン酸と4molの水素イオン、2molのATPが得られます。

解糖系は、別名で嫌気呼吸とも言われます。それはグルコースからピルビン酸に変化するまで、酸素を必要としないからです。
後述する、ミトコンドリアの内膜で起こる反応には、酸素が必要です。

このグルコースからできたピルビン酸は、次の②のTCA回路(ミトコンドリアの中のマトリクスという場所)で使われ、水素は③の電子伝達系(ミトコンドリアの内膜と膜間腔)で使われます。
グルコースから出来たものが無駄なく使用されるのが、凄いですね。

 

 

クエン酸回路=TCA回路=クレブス回路について

次に、クエン酸回路について説明します。クエン酸回路は、見つけた人の名前からクレブス回路とも呼ばれます。
また、Tricarboxylic Acid Cycleの頭文字をとってTCA回路(トリカルボン酸回路の略)とも言います。 

反応の起きる場所

「ミトコンドリアのマトリクス」という場所で起きます。これも細胞質基質と似てるのですが、ミトコンドリアの何の変哲もない場所のことです。上の絵の②の場所です。

 

アセチルCoAとは

アセチルCoAの構造図をわかりやすく

①の解糖系でできた、2つのピルビン酸はミトコンドリアのマトリクスと言われる部分で、アセチルCoAと言われる物質に変化します。聞きなれない言葉ですよね。。
ピルビン酸も聞きなれないですが、アセチルCoAはもっと聞きなれないですよね。

ただ、このアセチルCoAは、今後何度も出てくるので、言葉が難しいとはいえ無視できません。むしろアセチルCoAに馴染む必要があります。読み方は「アセチルコア」ではなくて「アセチルコエー」です。
聞いたことがなくて不安ですが、慣れてきますので少し我慢して下さい。

ちなみにCoAというのは、コエンザイムAの略です。コエンザイムQ10というサプリで「コエンザイム」は知ってる!という方も多いと思います。

コエンザイムAは、補酵素のことです。補酵素って何?という方も多いと思いますが、補酵素とは、高校の化学チックに言えば触媒です。補酵素=触媒=ビタミンと思って頂いて構いません。化学反応を進める手助けをする物質ってことです。ビタミンがなぜ代謝に重要かというと反応を促進する役割があるんですね。糖質制限で、ビタミンが重要となってくるのはそのためです。

アセチルCoAは、別名で「活性酢酸」と以前の学習要領では言われていたので、高校の化学を学んだことがある方は、上の絵のように、酢酸のOHの部分に、硫黄のSと補酵素A(CoA)が結合したと考えると分かりやすいかもしれません。 

クエン酸回路で得られるATPと水素の数

解糖系できたピルビン酸がミトコンドリアに入ると、アセチルCoAに変わります。そのアセチルCoAとオキサロ酢酸(ピルビン酸から作られます)が結びついて、クエン酸が出来ます。

クエン酸→α-ケトグルタル酸→スクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→りんご酸→オキサロ酢酸+アセチルCoA→クエン酸→・・・

とループしていき、一番はじめにクエン酸ができることからクエン酸回路と言われています。 始まりとなるオキサロ酢酸ですが、解糖系から出来たピルビン酸は一部、オキサロ酢酸にも変化します。 また、アミノ酸であるアスパラギン酸、アスパラギンからもオキサロ酢酸はできます。

この回路が一周の反応をまとめると、2C3H4O3+6H2O→6CO2+8(NADH+H+)+2(FADH2)+2ATP となります。
つまり、2molのピルビン酸から、2ATPと20個の水素が出てきます。

 

電子(水素)伝達系について

昔の生物の授業では、水素伝達系と言っていましたが、最近では、電子伝達系と言われるようになりました。

反応の起こる場所

ミトコンドリアの内膜でおきます。③の場所です。

 

得られるATPの数

解糖系で出来た水素とクエン酸回路で出来た水素をエネルギーとして、酸素を使用して水とATPを生み出します。

24H+ + 6O2 → 12H2O + 34ATP

ミトコンドリアの反応で酸素を使用すると言いましたが、この電子伝達系で使われます。
酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すのが呼吸とイメージがあると思いますが、クエン酸回路で先に二酸化炭素が出てきて、電子伝達系で酸素が使われるため順番としては逆なのも面白いですね。

よくみると得られるATPの数がダントツで違いますね。34ATPということは、解糖系の17倍のエネルギーです。それはここまで電子を与える水素を作ってきたからです。
ミトコンドリアの中で生まれるATPはクエン酸回路(2ATP)と合わせて、36ATPであることから、ミトコンドリアで生み出すATPは解糖系の18倍と説明されることもあります。

よく糖の代謝=解糖系と勘違いされがちですが、それだけではありません。糖の代謝の過程でもミトコンドリアが使用されます。解糖系の後に解糖系でできた、ピルビン酸でクエン酸回路、解糖系とクエン酸回路でできた水素が電子伝達系で使われるということです。

糖の代謝のみで身体に必要なエネルギーを生み出していると、脂質の代謝によるエネルギーが必要なくなって太りやすいという事です。
またエネルギー源を糖だけにしてしまうと、インスリンの大量発生や糖化などにより血管に炎症を起こさせてしまうという別の問題が生じてきます。

解糖系だけでも十分エネルギーが作れそうですが、人類は飽食の時代ばかりではありませんでした。いつ食べれるか分からない中で何万年も生き抜いてきました。
食べれる時に食べ、余ったエネルギーを中性脂肪として蓄えて、必要な時に使うという機能により人類は生き抜いてきました。

最近はいつでも食べれるようになったため、その機能が逆に肥満などの成人病の元となっているのは皮肉としか言いようがありません。

次に脂肪の代謝を見ていきましょう。  

脂肪・脂質の代謝について

次に、脂肪をどのようにエネルギーとして使うかということを説明します。脂肪は体内では、中性脂肪という形で存在します。

中性脂肪は、リパーゼによってグリセロールと3つの脂肪酸に分解されます。グリセロールは、解糖系や後述する糖新生に回されます。
ここで脂肪酸の構造についてみておきます。

脂肪酸の端っこには、酢酸などと同様にカルボキシル基(-COOH)がついています。途中に炭素間の二重結合がある場合を不飽和脂肪酸といいます。
逆にない場合を飽和脂肪酸といいます。いろんな油、脂肪酸の特徴(必須脂肪酸のお話など)については、改めて他の記事でご説明します。

そのカルボキシル基の(-OH)が、下の絵のように硫黄と補酵素(-S-CoA)に変わったものをアシルCoAといいます。

アシルCoAはカルニチンと結びついてミトコンドリアの中に入り込みます。(ココナッツオイルなどの中鎖脂肪酸の場合はL-カルニチンは必要ないです) 

その後、カルニチンと離れたのちに、カルニチンはミトコンドリアの外に出ます。

ミトコンドリアの中にアシルCoAが入るとアシルCoAからアセチルCoAができます。その時の反応をβ酸化といいます。

β酸化とは、アシルCoAのもともとカルボキシル基だった炭素の一個隣の炭素をα、二個隣の炭素をβと読んで、二個目の炭素が酸化する事で、アセチルCoAができることからβ酸化と呼ばれます。

そして、残った部分は少し短くなったとはいえ、形が同じなので、同じくアシルCoAと呼ばれて、β酸化が繰り返し起こります。
この際、電子伝達系で使用されるNADHやFADH2も同時に生まれます。アセチルCoAはクエン酸回路で使われます。

 

アミノ酸の役割とアミノ酸代謝

アミノ酸の役割は大きく2つあります。

①タンパク質、代謝に必要な酵素、窒素化合物の材料、ホルモン、情報分子、構造支持の高分子化合物の原料となる
②代謝されてエネルギー源になる

②では、これまで糖の代謝や脂質代謝で出てきたクエン酸回路を使用して行われます。

アミノ酸の代謝

ややこしそうに見えますが、20種類あるアミノ酸が、クエン酸回路に途中から参加する、あるいはピルビン酸やアセチルCoAを作れるという点だけ理解できれば十分です。

糖新生とは?

ケトン体の説明に入る前に、糖新生についてお話をしておきます。
糖新生は簡単に言うと、空腹時に主に肝臓で、アミノ酸(糖原性アミノ酸)や乳酸からできたピルビン酸をグルコースに、中性脂肪から離れたグリセロールをグルコースにする反応です。

解糖系の時に、グルコースをピルビン酸にまで変化させる反応がありましたが、それをわざわざATPを使ってピルビン酸からグルコースに逆行して行くので、無駄な働きに感じるかもしれませんが、
ミトコンドリアのない細胞では、グルコースがないと活動ができないことと、グルコースは核酸や電子伝達体の材料になるためにグルコースは最低限必要であるために起きる働きです。

具体的には、ピルビン酸が一旦、ミトコンドリアの中に入って、ピルビン酸カルボキシラーゼという酵素によって、オキサロ酢酸に変えられます。
オキサロ酢酸はミトコンドリアの外に出ることができないので、リンゴ酸デビドロゲナーゼによってリンゴ酸にまで変えられます。
クエン酸回路の右回りで、リンゴ酸の手前で合流してきたアミノ酸はそのままリンゴ酸の段階でミトコンドリアの外に出て糖新生に回されます。

ミトコンドリアの外に出たリンゴ酸は、オキサロ酢酸に戻り、ホスホエノールピルビン酸→3-ホスホグリセリン酸→1,3-ビスホスホグリセリン酸→グルセルアルデヒド3リン酸→・・・→グルコース
となります。

これから大事となるのは、ミトコンドリアの中のオキサロ酢酸がリンゴ酸に変化し不足している点です。

 

ケトン体が肝臓で生成

ここまできてやっとケトン体の話ができます。アセチルCoAはオキサロ酢酸と結びついて、クエン酸回路が回りはじめますが、血中のグルコースが少ない状態だと
グルコースからできるピルビン酸が不足します。また糖新生により、オキサロ酢酸をグルコースに戻す反応でも使用されるので、肝臓ではオキサロ酢酸が不足するので、脂肪酸由来のアセチルCoAが余ります。

余ったアセチルCoAは肝臓で、ケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトン)の合成に回されます。アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸は、水溶性で血液に溶けて肝臓から他の組織へ運ばれます。

 

肝臓以外の細胞でケトン体が再びアセチルCoAとして使用される

ケトン体の使われ方

運ばれたアセト酢酸は、クエン酸回路のケトグルタル酸から出来るスクシニルCoAと、酵素(スクシニルCoAトランスフェラーゼ)によってアセトアセチルCoAとコハク酸ができます。
アセトアセチル-CoAは、チオラーゼにより、2分子のアセチル-CoAに分解されます。

ケトン体が、ミトコンドリアのない細胞だけでなく、肝臓でも利用できないのは、この難しい長い名前の酵素(スクシニルCoAトランスフェラーゼ)が肝臓では存在しないため、肝臓以外の組織でケトン体が利用されるというわけです。アセト酢酸とスクニシルCoAから出来たコハク酸もクエン酸回路で使用されます。

水溶性のアセチルCoAをわざわざケトン体に変えて、再びアセチルCoAとして使うので、なぜわざわざケトン体として輸送するのか不思議に感じるかもしれませんが、細胞膜の脂質2重層をアセチルCoAは通過することができないので、小さい分子であるケトン体に変えていると考えられます。

ちなみに、ケトン体のうち、エネルギー産生に使われるのはアセト酢酸のみで、βヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に変換されエネルギー代謝に使用され、アセトンはエネルギー源にはならず呼気から排出されます。

 

脳のエネルギー源はブドウ糖のみという誤解

脳のエネルギー源はブドウ糖だから、糖を摂取しようと未だに言われる理由について説明します。

大きくは2個あって、一つは血糖値が低い時に血糖値が上がると実際に幸福感を感じて元気になる。
もう一つは、血液脳関門という、脂肪酸の分子には大きすぎて通過できない関門があるため、糖しかエネルギーとして使用できないのではないかというもっともらしい理屈があるからです。

 

血糖値が上がった時の多幸感は繰り返すと問題となる

前者については、糖質を大量に摂ると、血糖値が急上昇します。そうすると、インスリンが沢山分泌されますが、食前の血糖値にぴったり合うようにインスリンが分泌されるわけではありません。膵臓にそこまでの調整機能はなく、どちらかというと過剰にインスリンが分泌されてしまいます。

そうすると、食前よりも低血糖の状態に陥ります。低血糖になると、疲れや眠気などを感じるようになり、その際に、甘いものを食べると血糖値が急上昇して多幸感と共に、非常に元気になったような感覚が訪れます。ただ、時間がたつと再び血糖値が下がり、また甘いものを食べるという、薬物依存のような状態に陥ります。

これが砂糖が中毒性を持つと言われる所以です。この繰り返しに、副作用が無ければいいのですが、血糖値の上下動が激しいと血管の内皮細胞に炎症が起きることが分かっていますし、インスリンを大量に分泌し続けると、膵臓が弱り、インスリンを分泌する能力が弱まる糖尿病になってしまいます。


この低血糖から高血糖に変わる時、元気になる感覚、(運動をしていない状態でも)甘いものを口にした時、元気になる感覚は誰しも経験したことがあると思います。おやつで甘いチョコレートを食べた時、マラソンの後に甘いものを食べた時など、状況は違えど、脳に欠かせない栄養素は糖であると自分の感覚に一致する人が多いはずです。

 

空腹時はケトン体を脳がエネルギーとする

ここまで長く説明をしてきましたが、空腹時は、脳は脂肪酸を直接エネルギーにするわけではなく、肝臓でできたケトン体をエネルギーとします。ですので、脂肪酸が血液脳関門を通過できないことは全く関係ありません。

 

ケトン体とケトアシドーシス

糖尿病の患者は、インスリンの分泌が弱いため、ブドウ糖を取り込むことができないので、体はエネルギーを作ろうとグリコーゲンを使ったり、糖新生を行ったりして、糖を作りますが、それでも細胞に取り込まれないので、ケトン体が大量に発生します。そうすると血液が酸性に傾き、危険な状態に陥ります。

ただこれはインスリンの分泌ができない人の場合ですので、通常通りインスリンが分泌される人であれば全く問題ありません。

 

糖質制限時のケトン体の値の目安

不安であれば、血糖値を測定する機械で、ケトン体の値を測定することも可能です。

目安として、0.5mmol/Lくらいのケトン体が出ていれば、ケトン体質と言えます。ケトン体の単位は、μmol/Lが使われることも多いです。マイクロは10のマイナス6乗、ミリは10のマイナス3乗ですので、1000μmol/Lで1mmol/Lです。ケトアシドーシスの状態では、5000μmol/L(5mmol/L)とケトン体質の人と比較してもケトン体の値の桁が一桁異なります。

ケトジェニックダイエットを奨励する人の中には1mmol/Lから3mmol/Lくらいを奨励する人もいますが、私の意見では0.5mmol/Lくらいでも結構ストイックに糖質制限をしている感覚がありますので、
ケトン体の値を1mmol/Lを超えないくらいで糖質制限をすることをおすすめします。

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  • 川谷 洋史

    1980年12月・大阪生まれ。 東京工業大学・工学部・建築学科卒。一級建築士。
    2012年ごろより糖質制限にハマり、低糖質で無添加、良質な脂質、人工甘味料を使用しないパンやスイーツがないことから、自作を始める。
    2014年9月にフスボンを立ち上げ現在に至る。
    趣味
    食べること、スポーツ観戦、サウナ、ゴルフ、ゲーム、登山、Youtube
    マイブーム
    糖質制限×サウナ×オーソモレキュラー
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