都民の98%がビタミンD不足というニュースについて
こんにちは!フスボンオーナーです。
2023年6月上旬に、東京慈恵会医科大学の臨床検査医学講座・越智小枝教授および整形外科学講座の斎藤充教授らが、島津製作所と新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用して、2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象に調査を実施し、98%がビタミンD不足に該当していたことを明らかにし、テレビやネットニュースでも大きくとり上げられました。
ビタミンDに関してこれまで無関心だった方に対しては、ビタミンDが不足して何が問題なのか、どうして不足するのか、またどのように不足を補うのかなどについて深掘りしていきます。
また、オーソモレキュラーや栄養療法に詳しい方からすれば、何を今更、ビタミンDの必要性についてニュースにしているんだと思った方も多いと思いますので、今回の新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムがこれまでの血液検査におけるビタミンDの測定方法と何が違ったのかについても解説していきますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
ビタミンDの役割とは?
ビタミンDはカルシウム代謝に役立つ
ビタミンDは、肝臓と腎臓で代謝され、働く形の活性型ビタミンDに変換されることで、腸管からのカルシウムやリンの吸収を高め、骨・ミネラル代謝の維持において重要な役割を担っています。
このため、カルシウムが足りていても、ビタミンDが不足すると、カルシウム代謝異常を生じ、骨粗鬆症、くる病(背骨や四肢の骨が変形する)や骨軟化症(骨がもろくなる)が発症しやすくなると言われています。
カルシウムサプリにビタミンDが含まれていることが多いのは、上記のような理由からです。
ビタミンDは免疫をコントロールする役割も持っている
ビタミンDは現在、世界的に大きな注目を集めているビタミンです。その理由は、ビタミンDにはホルモンのような作用があり、免疫をコントロールする働きがあるからです。
ビタミンD不足は、免疫力低下により、花粉症、アレルギー、ぜんそく、関節炎、がんなどと関与すると考えられています。
ビタミンDの2つの供給源
ビタミンDには、2つの供給源があります。
ビタミンDを日光を浴びて生成
ひとつは、皮膚に含まれるプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール)は、紫外線(特にUVB)を受けることでプレビタミンD3に変化し、これが体温による熱異性化を経てビタミンD3(コレカルシフェロール)になります。
冬場は日照量も減る為、ビタミンDが体内で不足しがちになります。女性は、日焼け止めや日傘なので夏場も不足している可能性がありますので、注意が必要です。
食品やサプリなどから摂取
もうひとつは、食品やサプリから摂取する方法で、体内で必要なビタミンDには、ビタミンD2とビタミンD3があります。
ビタミンD2とビタミンD3の違い
ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)は、両方ともビタミンDの形態ですが、それぞれ異なる化学構造を持ちます。
ビタミンD2 (エルゴカルシフェロール) の化学式は C28H44O。
ビタミンD2は、菌類などの一部の生物が光合成を行う過程で生成されるエルゴステロールというステロイド型化合物が紫外線に曝露されることで生成されます。エルゴステロールは紫外線を吸収し、プレビタミンD2を形成します。これが熱により異性化を起こしてビタミンD2になります。
ビタミンD3 (コレカルシフェロール) の化学式は C27H44O。
ビタミンD3は、人間の皮膚に含まれる7-デヒドロコレステロールというステロイド型化合物が紫外線に曝露されることで生成されます。7-デヒドロコレステロールは紫外線を吸収し、プレビタミンD3を形成します。これが熱により異性化を起こしてビタミンD3になります。
立体構造について説明すると、ビタミンD2とビタミンD3の構造は非常に似ています。主な違いは、D2の側鎖に存在するメチル基と二重結合の位置にあります。具体的には、ビタミンD2の側鎖には二重結合と追加のメチル基があります。これに対して、ビタミンD3の側鎖はより単純で、メチル基と二重結合が一つ少ないです。
これらの微妙な化学的差異により、ビタミンD2とD3は体内で異なる効率で活性化され、体内に保持されます。一部の研究では、ビタミンD3がビタミンD2よりも効率的に利用され、血液中のビタミンD濃度をより長く高く保つことが示されています。
ビタミンDが多く含まれる食材
ビタミンD2とD3はそれぞれ異なる食物源から主に得られます。
ビタミンD2が多く含まれる食材
ビタミンD2は主に植物性食品や菌類に見られます。
天日干しされたきのこ:特にシイタケやマッシュルームは良い源です。きのこは天日干しされることによってビタミンD2の含有量が増えます。したがって、自然光や紫外線にさらされて育ったきのこは、室内で育ったきのこよりもビタミンD2が多いです。
ビタミンDを強化した食品:一部の植物性ミルク(アーモンドミルク、大豆ミルクなど)、シリアル、豆腐などにはビタミンD2が添加されていることがあります。
ビタミンD3が多く含まれる食材
・脂肪分の多い魚:サーモン、マグロ、サバなどは特に良いビタミンD3の源です。
・魚肝油:特にコドライバーオイルはビタミンD3が非常に豊富です。
・卵:卵黄にはビタミンD3が含まれています。
・ビタミンDを強化した食品:一部の牛乳や乳製品、シリアルなどにはビタミンD3が添加されています。
・牛肉や豚肉の肝臓:これらの食材はビタミンD3を含んでいますが、一般的には他の食材よりも含有量は低めです。
ビタミンDの摂取基準
ビタミンDのサプリでは、μgやIUという単位がよく使われます。
私は以前、戸惑った記憶があるので、量の単位であるμg(マイクログラム)とIUの違いを先に説明しておきます。
少し前はIU(アイユー)という国際単位で示されていました。
現在ではμg(マイクログラム)で表されます。
1μg=40IUです。
厚生労働省(日本人の食事摂取基準2015年度版による)の目安量は以下の通りです。
成人(男女) 5.5μg/日
( 220 IU/日 )
耐容上限量100μg/日
( 4,000 IU/日 )
大体、市販のサプリは、1カプセル1000IUのものが多いので、MAXで1日4錠までいけることになりますが、ビタミンDの過剰摂取を避けるために、2錠から3錠で調整するのが良さそうです。
ビタミンDサプリの原材料による違いについて
オーソモレキュラーで有名な溝口先生の本に以下のような記述があります。
通常の安価なビタミンDは、羊毛に紫外線を照射することによって生成されます。
(中略)
一方で、高品質なビタミンDは魚の肝油が原料となります。ですので、原材料に精製魚油が含まれるものを選びましょう。多くは、生成されたタラの肝油が含まれていることを示しています。
溝口徹 最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門より引用しています
上記の記述を見ると、安価か高価かというだけの根拠で少し説得力に欠けるため、違いを調べてみました。
羊毛の脂(ランオリン)には7-デヒドロコレステロールという化合物が含まれており、これが紫外線にさらされるとビタミンD3(コレカルシフェロール)に変換されます。
一方、魚の肝油(特にタラの肝油)から得られるビタミンDは、他の栄養素(例えば、ビタミンAやオメガ3脂肪酸)も含むメリットがありその分高価なようです。
ですので、オメガ3のサプリやビタミンAのサプリを別で摂取している場合は、羊毛の脂を原材料としている場合でも特に問題がないと私は考えます。
ビタミンDサプリの摂取で気をつける点
ビタミンDサプリを摂取する際の注意点について以下に記します。
ビタミンA欠乏症
ビタミンDはビタミンAと核内受容体(細胞の中の核で情報を受信する部分)を共有するため、ビタミンDを多く摂取するときに、ビタミンAのシグナルが入りにくくなり相対的なビタミンA欠乏症状(ドライアイ、夕方目が見えにくくなるなど)が出る場合もあります。
(中略)
また、ビタミンAは以前から知られる皮膚や粘膜を保つ役割以外にも、経口免疫寛容(口から摂取するもにはアレルギー反応を起こさないようにしようというメカニズム)が機能するために不可欠であることがわかっています。ビタミンDとは違う経路のシーズンケア成分ですので、ビタミンDとAを同時に摂るのが理想です。
日本機能性医学研究所オンラインストアから引用しています。
以上のように、ビタミンDを摂ると、ビタミンAの欠乏症が起きることがあるので、ビタミンAを同時に摂取をしましょう。妊婦の方はビタミンAの摂取基準がありますので気をつけて下さい。
高カルシウム血症
ビタミンDの過剰摂取は、血中カルシウム濃度の上昇(高カルシウム血症)を引き起こすことがあります。
これは、ビタミンDがカルシウムの吸収を助ける働きがあるためです。
高カルシウム血症の症状は以下の通りです。
・頻尿と喉の渇き
・食欲不振、吐き気、嘔吐
・便秘
・疲れや無力感
・精神的な混乱や集中力の欠如
・筋肉の痛み
・骨痛と骨折のリスク上昇
さらに重篤な場合、高カルシウム血症は腎臓の問題、心臓のリズム障害、胃腸問題、神経系の障害、さらには意識の混乱や昏睡を引き起こす可能性があります。
骨粗しょう症などで、病院で処方されるビタミンDをサプリ代わりに飲むと大変危険です。病院で処方されるビタミンDは、骨粗しょう症に効きやすいように処方されている活性型のビタミンDだからです。
ここで、不活性型のビタミンDと活性型のビタミンDの違いについて説明します。
活性型ビタミンDと不活性型ビタミンDの違い
ビタミンDは脂溶性のビタミンで、体内でステロイドホルモンのような作用を持ちます。
その機能を果たすためには、ビタミンDは活性型に変換される必要があります。
ビタミンDは体内に摂り入れられると、肝臓で最初の代謝を経て25-ヒドロキシビタミンD(通常、25(OH)Dと略されます)に変換されます。これが一般的に「循環ビタミンD」と呼ばれ、ビタミンDの血中濃度を測定するときには、主にこの形態が測定されます。
その後、25(OH)Dは腎臓(または他の組織で)でさらに代謝され、最終的に活性型のビタミンD、つまり1,25-ジヒドロキシビタミンD(通常、1,25(OH)2Dまたはカルシトリオールと呼ばれます)に変換されます。この形態のビタミンDが、カルシウムとリンの吸収を助け、骨の健康を維持するなど、ビタミンDが果たす様々な生理的作用を調節します。
したがって、不活性型ビタミンDとは、体内で活性化される前のビタミンD(ビタミンD3やビタミンD2、またはその代謝産物の25(OH)D)を指し、活性型ビタミンDとは、活性化された形態のビタミンD(1,25(OH)2Dまたはカルシトリオール)を指します。
不活性型のビタミンDは必要に応じて活性型のビタミンDに変換されるため、少しは摂りすぎても問題ありませんが、特定の病状(例えば、腎臓病)でビタミンDの活性化が適切に行われない場合、活性型のビタミンD(カルシトリオール)やその類似体が直接処方されることもあるので、不活性型か活性型か確認するようにしましょう。
ビタミンDの血中濃度の測定と血中濃度の基準値について
ビタミンDの大部分は25(OH)Dに代謝され、血中で長時間循環するため、生体内のビタミンDの過不足の指標として測定できます。
不足:20 ng/mL(50 nmol/L)未満
十分:20 ng/mL(50 nmol/L)以上〜30 ng/mL(75 nmol/L)未満
理想的:30 ng/mL(75 nmol/L)以上〜100 ng/mL(250 nmol/L)以下
「ビタミンD不足・欠乏の判定指針(策定:厚生労働省難治性疾患克服研究事業ホルモン受容機構異常に関する調査研究班、日本骨代謝学会、日本内分泌学会)」から引用しています。
ビタミンD欠乏を評価する上で、25(OH)D濃度が20ng/mL未満の場合を欠乏症、20~30ng/mLは不足状態とすることで国内外の見解はほぼ一致しています。
摂りすぎはよくないですが、不足している人も多いため、血液検査で、追加で25(OH)Dを測定するのが、間違いないと思います。
骨粗しょう症の恐れのある方などは、2016年からビタミンDの処方が保険適応となっています。
ビタミンDの血中濃度の測定方法について
25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の血中濃度を測定する方法は、一般的には酵素結合免疫吸着試験(ELISA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS/MS)などが使用されます。
それぞれの方法には特性や精度、コストなどにおいて違いがあります。
酵素結合免疫吸着試験(ELISA): 比較的シンプルで低コストな手法であり、一般的な臨床検査室で広く使われています。しかし、精度は必ずしも最高ではなく、他の物質が反応に干渉する可能性もあります。
化学発光免疫測定法(CLIA): 一般的にELISAよりも精度が高く、迅速な結果が得られるという利点があります。しかし、こちらも他の物質が反応に干渉する可能性があります。
液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS/MS): これは現在のところ、血中25(OH)D濃度を最も正確に測定する手法とされています。それは、特定の化合物を非常に高い精度と感度で検出でき、他の物質の干渉を最小限に抑えることができるからです。しかし、この方法は他の2つの方法に比べて設備投資や運用コストが高く、専門的なスキルと高度な機器を必要とします。
これまでは、日本国内ではCLIAを用いて、ビタミンD(25(OH)D)の血中濃度を測定していたことが多かったようですが、2023年6月の東京慈恵会医科大学と島津製作所の共同研究による発表は、新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用しており、精度がより高いという点で新しかったようです。
ビタミンDの免疫に対する働き
ビタミンDは免疫系に対して多くの役割を果たしています。ビタミンDは、免疫応答を調節するために、T細胞、B細胞、および抗原提示細胞などの免疫細胞に直接作用します。
ビタミンDは、免疫系が過剰反応することを防ぎます。これは、自己免疫疾患(体が誤って自分自身の細胞を攻撃する疾患)の予防に役立ちます。また、ビタミンDは、感染症に対する免疫応答を強化するとされています。
アレルギー性鼻炎については、研究はまだ完全には確定していませんが、一部の研究ではビタミンDがアレルギー反応を抑制する可能性が示唆されています。これは、ビタミンDが免疫系のバランスを調整し、過剰な免疫反応(アレルギー反応は過剰な免疫反応の一種)を抑制する能力に関連している可能性があります。
ビタミンDとアレルギー性鼻炎について
ビタミンDと免疫系、特にアレルギー性鼻炎との関係については以下のような研究が行われています。
"Vitamin D and the immune system" - Published in Journal of Investigative Medicine, 2012. This paper discusses the role of Vitamin D in modulating the immune response.
"Association between vitamin D and respiratory outcomes in Canadian adolescents and adults" - Published in Journal of Asthma, 2015. This paper discusses the relationship between Vitamin D levels and respiratory conditions including allergies.
"Vitamin D and Allergic Rhinitis" - Published in Current Opinion in Allergy and Clinical Immunology, 2010. This paper reviews the potential links between Vitamin D and allergic rhinitis.
アレルギー鼻炎でスギ花粉に悩まれている方は、舌下免疫療法が最近は主流になってきていますので、そちらを医師と相談して実践してみるのもよいと思います。
好酸球の値が下がった
私自身は、小さいころから鼻づまりに悩まされていたのですが、18年ほど前に、粘膜下下鼻甲介骨切除術・下鼻甲介粘膜切除術を受けてから鼻づまりに関して悩むことはなくなりました。
花粉の季節もそこまで悩んでいるわけではないのですが、舌下免疫療法に興味があったため、先日、血液検査を行い、アレルゲンの検査をしました。
結果、どのアレルギーの指標も高くなく、スギだけは少し高かったのですが、数年かけて舌下免疫療法をやるほどではないと医師から言われ、自身も同じように考えたのでやめることにしました。
アレルギーの各項目よりも好酸球の値が、2017年の時に6.1%だったのが、1.4%まで下がっていたのが、驚きでした。
季節や体調によっても変動するのかもしれませんが、ビタミンDと同じく自己免疫疾患を調整すると言われている「プロバイオティクスのサプリ」と「冬場のビタミンDサプリ」と炎症を起こさない「低糖質な食生活」を組み合わせているからかもしれません。
好酸球が高いとお悩みの方は、上記の食生活を半年ほど続けてみてはいかがでしょうか。
First lowcarb bread
低糖質な食生活
の際の置き換え食に
著者プロフィール
フスボンオーナー
川谷 洋史
HIROSHI KAWATANI
1980年・大阪生まれ
東京工業大学・工学部・建築学科卒
一級建築士
2012年ごろより糖質制限にハマり、低糖質で無添加、良質な脂質、人工甘味料を使用しないパンやスイーツがないことから、自作を始める。
2014年9月にフスボンを立ち上げ現在に至る。
趣味
食べること、スポーツ観戦、サウナ、ゴルフ、YouTubeを観る
マイブーム
糖質制限×サウナ×オーソモレキュラー