糖質制限でよく使われる論文や研究シリーズ①ーダイレクト試験

糖質制限でよく使われる論文や研究シリーズ①ーダイレクト試験

こんにちは!フスボンオーナーです。

今回は、糖質制限の効果や安全性って体験談や理論だけではないのか?
きちんとした論文はあるのかといったご質問を受けて、糖質制限でよく引用される論文を一つ一つご紹介していきたいと思います。 今回はダイレクト試験です。

糖質制限でよく引用される論文・ダイレクト試験の体重結果のグラフ
糖質制限でよく引用される論文・ダイレクト試験(2008年)の二年間の体重変化のグラフ 青が糖質制限食

糖質制限の説明でよく使用される論文・ダイレクト試験(2008年)とは?

N Engl J Med. 2008 Jul 17;359(3):229-41.

上記リンクを辿っていただくと論文が読めます。

ダイレクト試験を直訳すると、何かを「直接」行った試験と思われる方も多いかも知れませんが、Dietary Intervention Randomized Controlled TrialをDIRECTと略しているようです。

個人的にはDIRECTの Trialの部分に試験が入っているので、ダイレクトだけでいいのではないかとも思うのですが、DIRECT試験と呼ぶようです。

英語の意味を少しだけ解説しますと、「Randomized Controlled Trial」というのは、日本語でランダム化比較試験と略され、評価の偏りを避け、客観的に治療効果を評価することを目的とした研究試験の方法のことです。

「Dietary Intervention」とは、直訳すると食事介入ですが、平たく言えば、食事指導を行うことです。ですので、DIRECTの意味は、「食事指導による治療効果を客観的に評価する研究」です。

この研究は、「The New England Journal of Medicine」(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン) という世界で最も長い歴史を誇り、世界で最も広く読まれ、最もよく引用され、最も影響を与えている一般的な医学系定期刊行物で発表された研究です。

イングランドという名前がつくのにアメリカの医学誌です。あと、実験場所はイスラエルで行われました。

カロリー制限をしない糖質制限食が、他の食事法よりも体重、中性脂肪値が下がる。HDL(善玉)コレステロールが増える。 糖尿病の人のHbA1cが改善することがわかった論文

研究の中身ですが、結構シンプルです。詳しくは、上記論文のリンク先の要件定義を見て頂ければと思いますが、

約320人の被験者を、

カロリー制限をしない糖質制限食
「カロリーを低くした低脂質食」
「カロリーを低くした地中海食」

の三つのグループに分けて、それぞれ2年間(2005年7月~2007年6月)続けた結果

「カロリー制限をしない糖質制限食」は、他の食事法よりも、体重が減る。中性脂肪値が下がる。HDL(善玉)コレステロールが増える。糖尿病の人のHbA1cが改善する。ということが分かった論文 です。この論文は、江部先生も山田悟先生も頻繁に引用されています。

カロリー制限と糖質制限はどっちがいいの?カロリー制限は必要ないの?
と聞かれた時にダイレクト試験を引き合いに出せばかなり有効であることが分かります。

2008年の論文ですので、もう10年以上前の論文ですが、逆に言えば、2007年にはまだ存在しなかったわけで、 山田悟先生がここ10年で栄養学の常識がかなり変わってきたというお言葉を頻繁に口にされる理由が分かります。

カロリーを以下に示す厚労省のカロリー摂取基準以上に摂られている方は、以下の基準まではカロリー制限をされた上で、それ以上のカロリー制限はせずに糖質を制限してタンパク質や良質な脂質をしっかり摂って頂くことをおススメします。

参考までに、以下に厚生労働省のエネルギーの食事摂取基準について載せておきます。繰り返しますが、これより少ないカロリー制限を行う必要はありません。

厚生労働省のエネルギーの食事摂取基準

エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー必要量(kcal/日)
男性
身体活動レベル I II III
0~5(月) 母乳栄養児 - 600 -
人工乳栄養児 - 650 -
6~11(月) - 700 -
1~2(歳) - 1,050 -
3~5(歳) - 1,400 -
6~7(歳) - 1,650 -
8~9(歳) - 1,950 2,200
10~11(歳) - 2,300 2,550
12~14(歳) 2,350 2,650 2,950
15~17(歳) 2,350 2,750 3,150
18~29(歳) 2,300 2,650 3,050
30~49(歳) 2,250 2,650 3,050
50~69(歳) 2,050 2,400 2,750
70以上(歳)~ 1,600 1,850 2,100
性別 女性
身体活動レベル I II III
0~5(月) 母乳栄養児 - 550 -
人工乳栄養児 - 600 -
6~11(月) - 650 -
1~2(歳) - 950 -
3~5(歳) - 1,250 -
6~7(歳) - 1,450 -
8~9(歳) - 1,800 2,000
10~11(歳) - 2,150 2,400
12~14(歳) 2,050 2,300 2,600
15~17(歳) 1,900 2,200 2,550
18~29(歳) 1,750 2,050 2,350
30~49(歳) 1,700 2,000 2,300
50~69(歳) 1,650 1,950 2,200
70以上(歳)~ 1,350 1,550 1,750
妊婦 初期(付加量) +50 +50 +50
妊婦 中期(付加量) +250 +250 +250
妊婦 末期(付加量) +500 +500 +500
授乳婦 (付加量) +450 +450 +45
※太字はフスボンをよくご利用されているであろう層です。年齢や性別、活動量によって必要なカロリーも結構変わるので注意が必要です。
1 成人では、推定エネルギー必要量=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル として算定した。18~69歳では、身体活動レベルはそれぞれI=1.50、II=1.75、III=2.00としたが、70歳以上では、それぞれI=1.30、II=1.50、III=1.70とした。50~69歳と70歳以上で推定エネルギー必要量に乖離があるように見えるのはこの理由によるところが大きい。
(参考1) 15~69歳における各身体活動レベルの活動内容
身体活動レベル1 低い(I) ふつう(II) 高い(III)
1.50 (1.40~1.60) 1.75 (1.60~1.90) 2.00 (1.90~2.20)
日常生活の内容 生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合 座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客等、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合 移動や立位の多い仕事への従事者。あるいは、スポーツなど余暇における活発な運動習慣をもっている場合
個々の 活動の 分類 (時間/日)2 睡眠(1.0) 8 7~8 7
座位または立位の静的な活動 (1.5: 1.1~1.9) 13~14 11~12 10
ゆっくりした歩行や家事など低強度の活動 (2.5: 2.0~2.9) 1~2 3 3~4
長時間持続可能な運動・労働など中強度の活動(普通歩行を含む) (4.5: 3.0~5.9) 1 2 3
頻繁に休みが必要な運動・労働など高強度の活動 (7.0: 6.0以上) 0 0 0~1
1 代表値。( )内はおよその範囲。
2 ( )内は、activity factor(Af:各身体活動における単位時間当たりの強度を示す値。基礎代謝の倍数で表す)(代表値:下限~上限)。
(参考2) 身体活動の分類例
身体活動の分類 (Af1の範囲) 身体活動の例
睡眠(1.0) 睡眠
座位または立位の静的な活動 (1.1~1.9) 横になる。ゆったり座る(本などを読む、書く、テレビなどを見る)。談話(立位)。料理。食事。身の回り(身支度、洗面、便所)。裁縫(縫い、ミシンかけ)。趣味・娯楽(生花、茶の湯、麻雀、楽器演奏など)。車の運転。机上事務(記帳、ワープロ、OA機器などの使用)。
ゆっくりした歩行や家事など低強度の活動 (2.0~2.9) 電車やバス等の乗物の中で立つ。買物や散歩等でゆっくり歩く(45m/分)。洗濯(電気洗濯機)。掃除(電気掃除機)。
長時間持続可能な運動・労働など中強度の活動(普通歩行を含む) (3.0~5.9) 家庭菜園作業。ゲートボール。普通歩行(71m/分)。入浴。自転車(ふつうの速さ)。子どもを背負って歩く。キャッチボール。ゴルフ。ダンス(軽い)。ハイキング(平地)。階段の昇り降り。布団の上げ下ろし。普通歩行(95m/分)。体操(ラジオ・テレビ体操程度)。
頻繁に休みが必要な運動・労働など高強度の活動 (6.0以上) 筋力トレーニング。エアロビックダンス(活発な)。ボートこぎ。ジョギング(120m/分)。テニス。バドミントン。バレーボール。スキー。バスケットボール。サッカー。スケート。ジョギング(160m/分)。水泳。ランニング(200m/分)。
1 Activity factor(Af)は、沼尻の報告に示されたエネルギー代謝率(relative metabolic rate)から、以下のように求めた。 Af=エネルギー代謝率+1.2 いずれの身体活動でも活動実施中における平均値に基づき、休憩・中断中は除く。
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)概要 より引用しています。
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  • 川谷 洋史

    1980年12月・大阪生まれ。 東京工業大学・工学部・建築学科卒。一級建築士。
    2012年ごろより糖質制限にハマり、低糖質で無添加、良質な脂質、人工甘味料を使用しないパンやスイーツがないことから、自作を始める。
    2014年9月にフスボンを立ち上げ現在に至る。
    趣味
    食べること、スポーツ観戦、サウナ、ゴルフ、ゲーム、登山、Youtube
    マイブーム
    糖質制限×サウナ×オーソモレキュラー
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